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14 mの杭を 16 m打ち込む [困惑]

建物を支える杭の一部が支持層に届いていないため建物が傾いた、横浜市都筑区のマンション「パークシティLaLa横浜」について、問題の杭 8 本の施工不良が基礎付けられたと、先月初旬に報じられました(産経ニュース2016年4月4日「くい6本未到達、2本深度不足 再調査結果 施工不良裏付け」)。
     
記事の内容は、元請けの三井住友建設が「斜めボーリング」と呼ばれる手法で再調査したところ、
くい 6 本の支持層の深さは 16.26 ~ 17.76 メートルだったが、6 本とも支持層に届いていなかった、
別のくい2本の支持層の深さは 15.79 メートル と 15.98 メートルで、届いているものの深さが十分でなかった、
     

ことが判明したというものでした。

杭6本については、支持層の深さまでの長さが足りなかったということですので、杭の打ち込みはそれら 6本の杭の支持層の深さ(16.26~17.76 メートル)より短かったこととなります。

残りの、別のくい2本は支持層に届いていたが、その深さが十分でなかったということですが、

横浜市建設局が作成する「基礎ぐい工事問題に関する対応について」との資料2頁目に、旭化成建材が採用していたDYNAWING工法の説明を読むと、

「支持層と くい先端の距離が 1 m」となるまで 杭を挿入するようです。

したがって、こちらの 記事にある「別のくい2本の支持層の深さは 15.79 メートル と15.98 メートルで、届いているものの深さが十分でなかった」とは、

1本の杭は 15.79~16.79 メートル 打込まれており、もう1本の杭の方も 15.98~16.98メートル打込まれていた

とのことが書かれていることになります。

 

ところで、打ち込んだ杭の長さについて 昨年(2015年)12月、

「パークシティーLaLa横浜」の設計、施工をした元請の三井住友建設は 下請である旭化成建材に対し 14 メートルの杭を使うように指示していた

と報じられていたところでした(産経ニュース2015年12月3日「前の建物より4メートル短いくい使用を指示 三井住友建設」)。

 

三井住友建設が、事前に行った地盤調査の結果を基に、マンションで採用するくいの工法や太さなどを勘案し、14 メートルの杭で十分だと判断をし、14メートルの杭が使われることとなったということだそうです。

 

長さ 14 メートルの杭が、15メートル以上の深さにある支持基盤に届いていないのは当然のことなのですが、

杭の打ち込みの深さが足りなかったとされる2本の杭は 15.79メートル ないし 15.98 メートルの深さまでは間違いなく打ち込まれていることになります。

この2本ですが どのようにして 16メートル近く打ち込むのでしょう ?  

杭は 14メートル しかないわけですし。  

 

三井不動産レジデンシャルと三井住友建設が 横浜市に提出する 調査結果報告書 に目を通してみれば、その理由が分かるはずであろうと 待っていますが、   

調査結果報告書の提出期限が先月28日、再々度延期されることとなり、5月末から6月末へと変更されることになってしまいました( 日テレニュース2016年4月28日「杭データ改ざん  検証報告が3度目の延期」)。


懲戒休職の際、生活が特別に拘束されるわけではない [困惑]

岐阜県揖斐郡池田町が、停職処分中にフェイスブッグに旅行の写真を投稿をした女性主事を懲戒免職処分にしたと発表したということです(朝日新聞DIGITAL2016年5月3日「停職中に旅行の写真をFBに投稿  女性主事を懲戒免職」中日新聞2016年5月3日「停職中SNS投稿  池田町、町職員を懲戒免職」) 。
     
   
朝日と中日の2つの新聞記事の内容を整理してみると、
   
昨年11月2日に停職6ヶ月の懲戒処分を受けた女性主事は、停職前に訪れた東京などの旅行の写真をフェイスプックに投稿していた。
   
池田町は、同月下旬に、町民の指摘から、女性主事が旅行の写真をフェイスブックに投稿していることを知り、副町長から女性主事に対し「停職中は投稿しないように」と注意をした。
   
女性主事は今年3月下旬にも、再び奈良の写真をファイスブックに投稿した。
      
女性主事によるフェイスブックへの旅行写真の投稿は、地方自治法33条(「職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。」)が規定する「信用毀損行為の禁止」に該当するとして 池田町は女性主事に対し懲戒免職処分とした、
    
という経過であることがわかります。
    
つまり、       
     
停職処分中であった女性主事が、副町長から「停職中は投稿しないように」と注意されていたにもかかわらず、その注意を守らずに、ファイスブックに再度、旅行の写真を投稿をしたこと
   
を池田町は問題にし、懲戒免職 としているわけです。
      
    
    
ですが、この池田町の懲戒処分ですが、停職処分前の旅行の写真をフェイスプックに投稿したことが非違行為であることを前提としたものですが、 非違行為になるといえるのでしょうか。
 
疑問です。 
 
また、仮に、懲戒事由になるとしても、懲戒免職できるほどのものかについても疑問です。
   
    
   
     
職員の一定の義務違反に対する道義的責任を問うことにより、公務員関係における規律ないし秩序の維持を目的として、任命権者が科す職員の意に反する処分を、(公務員の)懲戒処分といいます。
   
そして、この懲戒処分のうち、職員の身分を失わせる処分のことを免職(処分)、職員を一定期間職務に従事させない処分のことを停職(処分)と言います(大阪市のホームページ「地方公務員における分限処分と懲戒処分」参照)。 
    
池田町職員に対する懲戒手続等については、地方公務員法(第29条) と、同法第29条第2項、第4項を受けて池田町が制定する条例(「職員の懲戒の手続及び行為に関する条例」)が規定していますが、
     
「職員の懲戒の手続及び行為に関する条例」は、(懲戒処分である)停職の効果として、停職者が職務に従事しないことと、給与が支払われないことが規定されているだけです(同条例第5条第2項、第3項参照)。
     
     
懲戒による休職を 「自宅謹慎」と言ったりするため、休職中は日中は外出しては駄目だと誤解をしている人がいますが、
蟄居(家に引きこもっていること)していなさい」というではありません。
     
 
懲戒処分としての停職の効果ですが、停職中は、「働けないし、給料も支払ってもらえない」との効果しかありません(とは言え、停職中は給料支払いがないわけですから、重大な制裁であることは間違いありません。)。
    
懲戒処分としての停職処分による 停職中だからということで、停職者が日常生活を送っていく上で、特別な制約が加えられることになるわけではありません。
    
   
    
私生活上の非違行為が懲戒事由となることがないわけではありませんが(労働政策研究・研修機構「個別労働関係紛争判例集5. 人事制度」「(54)【服務規律・懲戒制度等】私生活上の非違行為」)、
   
職員の方には 私生活の自由 があるわけなので、
   
 
(当然、写真の内容にも拠ることになりますが、)休職前に旅行先で撮影した写真を、副町長の注意を聞き入れず、フェイスブックに投稿したというだけでは、私生活上の非違行為になるとは、なかなか認めてもらえないのでないでしょうか。
    
副町長の女性主事への注意にせよ、私生活に過度に介入した業務命令権などは認められないため、副町長の注意は、違反に対する制裁など認められない、任意の「お願い」程度のもとしか認めて貰えないかもしれません。   
       
    
またさらに、懲戒処分をなするには相当性が求められ、その処分が重きに失する場合には懲戒処分は無効となってしまいます(国家公務員に関し人事院が作成している「懲戒処分の指針について」参照)。 
     
この点の、懲戒免職処分の有効性 についてもどうなのかという疑問があります。
   
    
人事院作成の「懲戒処分の指針について」を見てみると、
    
女性主事に対する、そもそもの停職6月の懲戒処分自体、相当性は どうなんだろうかという疑問を持ちました。  
      
        

検察事務官、証拠品の窃盗 [困惑]

横浜地検の検察事務官が証拠品の現金300万円を盗んだとして先月27日に逮捕されました(カナコロ 神奈川新聞2016年4月27日「検察事務官を逮捕 、証拠品の300万円盗む  横浜地検」)。
   
記事では容疑者の事務官が「総務部で証拠品の管理などを行う担当だった」と書かれていますが、証拠品の管理は検務部門の業務で、事務局部門の総務の業務ではありません(法務省HP「検察事務官の幅広い職場と仕事」参照)。
   
事情聴取するため、急ぎ、総務部付ということで 異動させたのでしょう。
    
    
ところで、刑事事件についておいて押収された物の受入れ等の事務について法務省は、
   
証拠品事務規程」というものを定めています。
 
その「第3章  保管事務」では、
   
(証拠品の保管者)
第13条  証拠品(換価代金を除く。)の出納保管は、証拠品係事務官が行う。   
    
 
(立会封金)
第15条  証拠品が押収物たる通貨であるときは、証拠品係事務官は、所属課長等立会いの上でその金額、種類及び数量を封筒の表示と対査し、立ち会った所属課長等と共に封筒に封印する。
   
(証拠品の保管場所)
第16条  証拠品(換価代金を除く)は、倉庫又はこれに代わる場所に納めて保管する。
         
2  次に掲げる証拠品は、倉庫その他堅ろうな容器又はこれに代わる施錠できる設備に収納して保管する。
 
(1)  通貨、証券、貴金属その他の貴重品と認められる物
   
(2)  劇毒物、けん銃その他の取扱い上危険と認められる物
   
(3)  覚せい剤、麻薬その他 これに類する物
        
   
規程が遵守されていたのであれば、証拠品 の現金300万円は、所属課長立会いの下で封印されて金庫に保管されていたことになるわけで、事務官はどうやって盗んだのか、関心が湧きます。
           
300万円の窃盗なら、流石に正式な公判請求でしょう。
  
いずれ報道によって どんな手口だったか分かるでしょう。

 


愛知県警では採用試験の受験者数は10年で半減 ? [困惑]

昨日の中日新聞28面の県内版に、次の 見出し と リード の記事が掲載されていました。

県警、懸命に魅力アピール

10年で受験者数半減  就活中の学生に

 

県警が、語学や情報技術をはじめ、各種分野での優秀な人材を確保するため、さまざまな工夫に乗り出している。

昨年度の採用試験の受験者数は約三千四百人で、十年前の半分。本年度の受験申し込みの締め切りが今月中旬に迫る中、就職活動中の学生らへのアピールに懸命だ。

(以下の記事本文は省略 )   

 

平成27年版「警察白書」192頁では、地方警察官の警察官採用試験実施状況(平成17年~26年)が公表しています(平成27年版「警察白書」「第6章 警察活動の支え」「第1節 警察活動の基盤」の図表6-3参照)。 

下の図表は公表されているものを引用したものですが、右肩下がりのグラフとなっていません。平成20年から22年にかけていったん受験者数は増加しています。

採用試験受験者については 平成17年の14万2千人のところ、平成26年は9万6千人ですから、おおよそ 3分の2 となっています。  

 全国.jpeg

 

中日新聞の記事によると、愛知県警の場合では、10年で受験者数が半減し、昨年は受験者数が3,400人まで減少してしまっているということになります。

トヨタ自動車のお膝元の愛知県では、警察官の志望動向が 全国的な傾向とは 異なっているのかもしれません。その現れが、受験者数が、全国平均では10年前の3分の1減であるところが、愛知県の場合は 5割減だということかもしれません。

調べてみるとおもしろそうです。

 

愛知県警のホームページには平成27年と平成26年の2年分の警察官採用試験の結果しか掲載されていませんが(「警察官採用試験の実施結果」参照)、

愛知県に採用される警察官は愛知県職員というわけなので、愛知県がホームページで 採用試験の実施状況を公表いています(愛知県のホームページ「試験実施結果(データ)」参照)。

そのため、平成18年から平成27年の10年間分の、警察官採用試験の受験者数、警察職員採用試験の受験者数を確認することができます。

 

下図がそれをまとめたものとなります。

記事では「昨年度の採用試験の受験者数は約三千四百人」ということでしたが、昨年度の平成27年度警察官採用試験の受験者数は 2,950人で、3,400人からは 450人ほど足りません。

 

もしかすると、記事の「昨年度の採用試験の受験者」とは、警察官採用試験の受験者に、警察つながりの、警察職員採用試験の受験者を 加えた 人数のことを言っているのかもしれません。

警察職員採用試験の受験者も調べることにしましたが、昨年度の平成27年度の警察職員採用試験の受験者数は 355人ということでした。

愛知県における平成27年度の警察官採用試験と警察職員採用試験の受験者の合計は 3,305人ということになります。その人数が 「約三千四百人」と言えるのかについては疑問がないわけではありませんが、これ以上 は調査不能なので、「約三千四百人」であることにしておきます。

 

次に、10年前の採用試験の受験者ですが、  

警察官採用試験の受験者数は、

平成18年度    4,005人

平成19年度    4,047人、

警察職員採用試験の受験者数の方は、

         平成18年度    548人

         平成19年度    327人

ということでした。 

 

減少は 3割 程度でしかありません。

「受験者が半減」なんてことを言った人など、本当にいるのかという 結果でした。

 

 愛知県警察官警察職員採用試験受験者数(人).jpg


再婚と養育費、あっけない結末 [困惑]

子供を連れて離婚した元妻が再婚し、再婚相手が元妻の連れ子と養子縁組した場合、子への扶養義務は第一次的には元妻と 養親となった再婚相手が負い、元夫の扶養義務は二次的なものになる と理解されています(国民生活センターのホームページ「暮らしの法律Q&A」第29回「再婚したら養育費はどうなる」参照)。

この見解は結論において、元夫の扶養義務を免れることを許すことになります。

不道徳極まりない、誤った考え方だと私は思っていますが。家裁のルールなので従わざるをえません。

 

それの派生的な問題。

「元夫が、元妻の再婚と再婚相手が子を養子縁組していることを知らなかったため、養育費を支払い続けていたところ、 元妻の再婚と再婚相手が子を養子縁組していたことを知り、元妻に対し養育費を返すよう請求してきました。

さて、元妻は元夫の請求に応じ、養育費を返さないといけないでしょうか。」

あなたの答えは どういうものでしょうか。

 

民法880条は次のように規定しています。

(扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)

第八百八十条 扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。

 

新版注釈民法を読んでみると、この民法880条の 変更・取消の基準時については、

⒜説 将来に向かってのみ生じる、

⒝説  変更・取消の請求時まで遡る、

⒞説  事情変更の時点まで遡る、

という3説があり、そのうちの ⒞説が多数説だと書いてあります。

 

私の感覚では、⒞説は「(理論的には正しいとしても、)過去に形成された法律関係に干渉することになるので問題外」、⒜説は「引き延しをされるおそれがあるので不当」、  

なので、請求時まで遡ることを認める ⒝説 が妥当といったところです。

 

そうしたところ、元夫が、⒞説 を前提に、元妻に対して 養育費の返還を求めてきた 養育費免除調停事件を 元妻側で受任することになりました。 

基準時を論点ズバリとした案件です。

 

裁判官は、調停の席で、審判となれば、⒞説 を前提に審判を書くと明言。

元妻と私は ⒝説 

    

こんな問題、家裁ではごろごろ転がっていたのでしょうが、白黒を付けようとする人がいないため、何十年もの間、場当たり的な解決がされ、学者や実務家も我田引水的な論評をしてきたのでは好き勝手なことを言ってきていたということなのではないでしょうか。

   

今回は よい機会です。調停を不調にしてもらい、事件は審判へと移行してもらいました。

 

 「(⒞説 にしたがった)審判が出て、次は高裁か」と思っていたところ、家裁の書記官から、申立人が審判を取下げたとの連絡がありました。

 

相手がリングを下りてしまったわけなので不戦勝です。

ある意味、完璧な勝利と言えるのかもしれませんが、当初の意気込みからすると、少し残念な結末となってしまいました。


「潜入 生活保護の闇現場」 [困惑]

長田龍亮 さんという方が、貧困ビジネス施設での生活体験を著した 「潜入 生活保護の闇現場」という題名の本を読みました。
   
   
長田さんは、土木作業員の募集広告を見て面接に行った先の社長に、「土木作業員の仕事は今はないが、生活保護の施設を経営しているので、生活保護を受けてその施設で住めばいい」と勧められ、貧困ビジネス施設で生活を始めることとなり、
      
施設入所後、生活保護の認定を受け、生活保護費の支給を受けて都合1年間、施設で過ごされたことになるようです。
   
役所から月1回支払われる生活保護費(約13万円)は施設が取り上げてしまい、反面、寮は一日3食、貧弱な食事と貧相な部屋が提供します。それに加え、日払いで500円を現金支給します。
 
日払いされるのは 500円なので、月1万5千円。施設は、食費と寮費という名目で 11万5千円を入居者から徴収しているのと同じです。
  
これはボリすぎです。
    
    
酷い搾取をされている入居者は 内心では怒っているのではないかという感想を持ちますが、案に反し、長田さんは、
 
「生活できる場を提供して貰えているだけで有り難い」と、ほとんどの入居者が心から思っているようだと書かれています。
    
予想外の返事に  長田さんも戸惑われたかの感想を漏らされています。
   
寮は暴力団のような勢力の下にあるようではないようですし、暴力や脅迫が支配している場でもないようですので、本心のようです。
   
                    
       
施設がが生活保護受給費を取り上げてしまっていることは目を瞑った前提で考えてみます。
   
入居者に日払いが 1,500円だったとした場合、寮は住居費と食費で8万5千円 を徴収 となります。その場合、その施設を貧困ビジネス施設と呼ぶのでしょう。
 
日払い2,000円なら、住居費と食費は 7万円です。そんな施設を貧困ビジネス施設と呼ぶのでしょうか。
     
              
提供されるサービスの内容とその対価とがバランスしているかが決め手となるようです。
   
貧困ビジネス施設でしか生活できない人の場合には、供給曲線が(そうでない人と違い、)右側に相当シフトしているために、(そうでない人から見れば)ボッタクリに見えそうなことが、ボッタクリではなくて、引き合った価格であるという理解も一つの考え方として あるのではないかの感想を持ちました。
       
    

潜入 生活保護の闇現場 (ナックルズ選書)

潜入 生活保護の闇現場 (ナックルズ選書)

  • 作者: 長田 龍亮
  • 出版社/メーカー: ミリオン出版
  • 発売日: 2016/03/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


自己宛小切手の提供と本旨弁済 [困惑]

次回和解期日に 現金を持参してもらい、和解で訴訟を終わらせることを取り決めていた事件がありましたが、期日に相手方が持参したのは 現金ではなく、自己宛小切手 でした。    
 
しかも、持参した自己宛小切手には、2本線の間に「銀行渡」との文字が書かれている 線引小切手(下図参照)で、裏面に相手方の銀行届出印も押されていませんでした。しかも隣県の銀行の支店で支払場所になっていました。
 
   
自己宛小切手であるからといっても、線引されたものなど、当日に現金化など出来ません。
   
「決済は現金であったはず。事前の約束と違うので和解を蹴る」と言えるのでしょうが、裁判官の手前そんなことできません。しぶしぶ受け入れるしかありませんでした。 
    
 
今回の小切手は、隣県の手形交換所に取り立てに回されることになりますが、いつ現金化でき、取立手数料はいくら掛かるのでしょうか。
 
久しぶりだったのでよく分からず、銀行預金口座がある 2 つの銀行に問い合わせてみました。
   
まず、M銀行(メガバンク)は「現金化は当日を含め3営業日目午後1時以降、手数料は864円」で、
   
次のJ銀行(地銀)の方は「現金化は手続当日を含め5営業日目午前10時以降、手数料は648円」という返事でした。
    
銀行によってこうも違うんですね。     
     
           
   
「金銭債務の弁済のため、取引界において通常現金と同様に取り扱われている銀行の自己宛振出小切手を提供したときは、特段の事情がないかぎり、債務の本旨に従った弁済の提供があったものと認めるべきである」
   
と判示している 最高裁昭和37年9月21日判決 がありますが、 自己宛小切手だからと言っても、線引小切手の場合は「特段の事情あり」ということで、この判例の射程外だという理解でよいんですよね。
   
                       
        
 線引小切手.jpeg
(上記「線引小切手」の解説は、全銀協のHP 「動物たちと学ぶ 手形・小切手」PDF版19頁から引用させていただきました。)    

内容証明を送るだけで債権回収は可能か [困惑]

保険代理店をしている知人から、
   
「弁護士が 内容証明郵便で支払いを督促すると、結構の確率で債権回収は可能なの」と質問されました。
    
どうしてそんな質問をするのか聞いてみたら、
 
「法律専門家が内容証明で督促すれば、債権回収ができるかようなことが書かれている行政書士の先生のホームページを見かけるが、行政書士の先生が回収できるのであれば、弁護士の先生なら もっと回収できるのかと思って聞いてみた」
 
という返事でした。 
 
      
内容証明で督促したら債務者の方が支払いに応じてくれたなどいう(羨ましい)経験など、私は一度たりともありません。
   
なので「そんなわけないだろう」と返事を返しました。   
 
          
   
何となく気になり いろいろ考えてみたところ、可能性が全くないわけではないことに気が付きました。 
   
     
それは、ちょうど一年前のブログ(「一件落着」)に書いた 車両保険の事案のように、
  
損保会社が盗難自動車に掛けられていた車両保険の保険金を契約者に支払うこととなり、盗難自動車の名義を損保会社に変更し終えたのですが、その直後に盗難自動車が見つかったためか、損保会社は車両保険の保険金を支払うことが惜しくなり、「盗難自動車が見つかったので、車両保険の保険金は支払えない」と言い出した
   
事案であれば、可能性がないではないと思い至ったからです。
 
    
そんな場合であれば、内容証明で「嘘吐くな、車両保険の保険金を支払え」と書いて督促しさえすれば支払ってくれるでしょうから、内容証明郵便一通で 満額の債権回収ができることになります。
   
 
とは言え、そんな場合 私なら 電話一本で決着です。内容証明を送付するなどという タイミングが生まれてきません。
 
そこが商売下手なのかもしれません。 
    
   
 

消費税 8%引上時の際の識者の方々の意見 [困惑]

来年(2017年) 4月には 消費税 10%への引き上げが予定されていますが、一部の経済官庁で延期した場合の経済効果と実施した際の経済への打撃について非公式に検討を始めることになったということです(ロイター2016年3月7日「消費税の延期、一部官庁で効果の検討開始=政府関係者」)。 
   
 
平成26年(2014年)4月の消費税8%への引き上げは 景気を腰折れさせてしまい大失敗でした(産経ニュース2016年3月3日「野党、軒並み消費税10%延期主張  衆参ダブル選にらみ駆け引き激化」)。
    
なので財務省も面膜丸潰れで、今回は傍観するしかないということなのでしょう。
 
   
 
 ところで 消費税8%を引き上げる際には、その前年の平成25年(2013年)8月26日から同月31日にかけて、「今後の経済財政動向等についての集中点検会合」が開催されて、識者 60人から消費税引上げの可否の意見の聴取がされています。 
     
 
会合では識者 60人のうち、44人が、予定どおりに平成26年(2014年)4月から消費税8%に引き上げるべきという意見でした(ハフィントンポスト2013年9月2日「消費増税の集中点検会合、有識者の7割が増税賛成~誰が賛成?(有識者の賛否一覧)【争点:アベノミクス】」、 日本経済新聞2013年8月31日「消費税『予定通り増税を』7割超  政府の点検会合終了」各参照)。
   
 
伊藤隆敏東大名誉教授などは、引き上げによる落ち込みは軽微だと言ってみえたのですが(東洋経済のコラム、集中点検会合への提出資料)、消費税増税後には消費税8%が成功であったか否かについての論評を見付けることができません。
 
    
識者がこれでは、流石に まずくないですか。
    

どのマンションのことでしたっけ ? [困惑]

「どのマンションについての続報なのかは、知っていて当たり前」であるかのような報じ方がされている記事に接しました。

それは、住友不動産が

「2003年に販売し、1棟が傾いていた横浜市西区のマンション」

に関しての記事です。傾いた1棟だけ建て替える当初の方針を変更して、残り4棟についても建て替えることに方針を転換したとのことです(例えば、朝日新聞デジタル2016年2月29日「横浜の傾きマンション、全棟建て替え提案へ 住友不動産」)。

 

マンションデベロッパーが住友不動産なので、旭化成建材の杭打偽装で建て替えが問題になった昨年10月の、三井不動産(レジデンシャル)の件ではないことは 一応は分かります。

でも、「横浜市西区のマンション」などと言われても、いつ問題になった、どのマンションのことを言っているのかなど 分かる訳ありません。

 

なのに、どの新聞社もテレビ局も、右に倣えで、マンション名を明らかにしません。朝日新聞や、産経 などでは、竹中組 熊谷組が施工した物件だったという情報も省いています。

ここまで統一していると、スポンサー様の意向に従ったものと勘繰ってしまいます。 

 

このままでは 何となく気持が悪いので、どこのマンションのことを言っているのか確認してみました。

その結果ですが、(本当のことを言いますと確証が持てていないのですが、)

平成26年(2014年)6月に初めて新聞報道がされていた、横浜市西区の「パークスクエア三ツ沢公園」のことのようです。

パークスクエア三ツ沢公園では、コの字型のA棟と、L字型のB棟があり、住友不動産は 傾いたB南棟だけを建て替える方針を示していました(MAG2NEWS 2015年10月30日「もう一つの横浜・傾きマンションは今。住民から届いた悲痛な叫び」参照)。   

そうしたところ、追加調査をしたところ、建て替え予定でなかった、残り4棟のマンションの基礎部の配筋がちゃんとされていなかった箇所が23ヶ所見つかったことから、1棟だけの建て替えでは済まなくなったという次第のようです。