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国会記者会館 ( 1 ) [困惑]

脱原発を訴えるデモが永田町の国会周辺で毎週末開かれていますが、

それと並行して、デモの取材のために国会記者会館への立ち入りを求めているフリー記者と

国会記者会館を管理している国会記者会(国会記者クラブ)との熱い闘いが繰り広げられています。

   

山岡俊介氏のブログ(情報誌「ストレイドッグ」(山岡俊介取材メモ))の今日の記事(「『あなたたちに取材する権利はない』と居直る国会記者会館――反原発・官邸前抗議行動の取材のため立ち入りを求めるフリー記者を締め出し」)で、今日初めて知りました。

こんなことが起きてようとは思ってもみませんでしたが、

記者クラブの存在意義を考えさせてもらう上で、極めて分かりやすい実例を示してくれています。

      

まずは、どんなことが起こっているのか、百聞は一見に如かずです。

YOUTUBEの動画(「国有財産である国会記者会館を記者クラブが私物化」)を是非、見てみてみて下さい。

   

国会記者会館は、デモの様子を撮影する上で、ベストな ロケーションにあります。

この国会記者会館は、衆議院が所有していますが、任意団体の「国会記者会」(国会記者クラブ)が、事実上、管理しています。

なぜ、国会記者会が、国会記者会館を事実上の管理をしていると表現しているかと言いますと、

衆議院と契約を結ばないで、国会記者会館を(無償で)使っているからです(先月24日の田中龍介ジャーナルの記事(「国会記者クラブを提訴 『理由なき居候は不法占拠』」)。

法的な使用権限なく、事実上占拠している、というわけです。

   

この国会記者会館ですが、先ほども述べましたとおり、デモの様子を撮影する上でベストな位置にあるため、

会今年7月以降、フリーの記者や、ネットメディアが、また、外国メディアが

国会記者会館の屋上や4階­(最上階)でのデモを取材させてくれるよう、

国会記者会に対して申入れをしていますが、

国会記者会は建物の管理権を理由にし、申入れを拒否して、国会記者会館への立ち入りを認めません。

     

ビデオジャーナリストでOur Planet TVを運営する白石草さんが、国会記者会に今年7月6日に立ち入りを求めた際の様子が、

USTREAMの動画で見ることができます(http://www.ustream.tv/recorded/23797510)。

(この動画も必見だと言えます。)

   

動画の23分あたりで、国会記者会館屋上で、何台ものビデオで、デモの様子をビデオ撮影している状況が映し出されています。

このビデオ撮影は、当然のことですが、国会記者会に加盟する報道機関が撮影しているわけです。

でも、私たちは、テレビ等で、国会記者会館の屋上から撮影された、デモの様子を撮影した映像を見せてもらったことがあったのでしょうか。

たぶんなかったはずです。

   

「デモの様子を報道しない報道機関が、国会記者会館からデモの様子を撮影し、

デモの様子を報道したい報道機関が、国会記者会館からのデモの様子を撮影できない」、

なんていうことが現に起きているわけです。 

   

国民の知る権利に背を向けることとなっている国会記者会に、正当性を認めてくれるような人はいるのでしょうか。


はっちゃける [豆知識]

西原理恵子の「この世でいちばん大事な『カネ』の話」の中で、

「バカをやって はっちゃけて、つらい時期を … 」

との表現がされていました。

      

ここで使われている「はっちゃける」という言葉の意味が、 

「はしゃぐ」という意味だろうことは、前後の文脈から、何となく、分かりました。

でも、「はっちゃける」という言葉を、これまで聞いたことがありませんでした。 

  

そう言えば、大学生の頃、「あばれはっちゃく」というテレビ番組がありました。

高知の方言なのかぁと思い、

岩波国語辞典(第6版)(2004年発行)で調べてみました。

でも、

はっちゃけ、

はっちゃける、

という言葉は載ってません。それは、広辞苑でもそれは一緒でした。

      

そんなわけで、インターネットで検索してみました。

日本語俗語辞典というサイトで、「はっちゃける」の意味を、

はっちゃける

っちゃけるとは、はめをはずしてはしゃぐこと。

【年代】  2001年  【種類】 若者言葉

 

また、「はっちゃける」の解説を、

はっちゃけるとは日常生活の嫌なことやイライラを忘れ(忘れるために)、思う存分にはしゃぐことである。

はっちゃけるは2000年辺りから若者を中心に使われたが、次第にストレスの多いサラリーマンなど社会人にも使われるようになる。

同時にストレス発散のためにはしゃぐという行為以外に、単に「はりきる」といったニュアンスでも使われるようになる。

しているのを見つけました。

  

「はっちゃける」という言葉が、 十数年前頃から若者の間で使われるようになった言葉であるのであれば、

50歳の私が、これまで「はっちゃける」という言葉を聞いたことすらなかったのは、当たり前のことでした。

  

ところで、「はっちゃく」 あるいは 「はっちゃけ」 という言葉は、関東北部から東北地方の一部にかけての方言で、「暴れん坊」ということのようですが(YAHOO! JAPAN「知恵袋」の「『あばれはっちゃく』の「はっちゃく」や「はっちゃけ~はっちゃけ~」は、どこか...」)、

この「はっちゃく」あるいは「はっちゃけ」という言葉と、「はっちゃける」とは、繋がっている言葉なのでしょうが、どう繋がっているのかよく分かりませんでした。

語源までは調べておれませんので、これで調査は終了しました。

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国税庁の統計情報 [検討]

    

兵庫県内の姫路、豊岡、柏原、洲本の4税務署が、今年6月27日、兵庫県教育委員会(県教委)に対し、

県教委が臨時教員に支払った退職手当が、課税対象の給与所得に当たるとして、

2007~2010年度の延べ 1530人分の源泉所得税と不納付加算税計1574万3千円を支払うよう納税告知処分をし、

それに対し、県教委は処分を不服とし、今年8月15日に4税務署長に異議申し立てをしていました(神戸新聞の8月17日の記事「臨時教員の退職手当は課税対象 県教委に納税告知処分」)。

この県教委の異議申して立てに対し、4税務署は今月1日、県教委の異議申し立てを認め、処分を取り消したということだそうです。

    

この朝日新聞デジタルの記事もそうですが、

産経ニュースWESTの記事(「国税側が課税処分取り消し 臨時教員の退職手当めぐり 軍配は兵庫県教委に」も、

国税当局が課税処分を取り消すのは極めて異例

とまず報じた上で、

4税務署を管轄する大阪国税局は「個別の事案なのでコメントできない」としている

と、大阪国税局担当者のコメントを載せています。

その上で、さらに、

国税庁によると、平成23年度の異議申し立ての処理件数は4511件で、そのうち申立人の主張が一部認められたのは331件。全部認められたのはわずか44件だけで、全体の1%にも満たない

との記事を載せています。

記事の「国税庁によると」とは、国税庁の担当者からとったコメントなのでしょうか。

それとも、記者が税務統計を調べて得た、データを評してのことなのでしょうか。

朝日デジタルも、産経ニュースWEST も全く同じ表現なので、

国税庁の人が複数の記者の前で、そのようなコメントを発したとも考えられます。

でも、そうだとすると

なぜ、国税庁の担当者は、そんな発言をしたのかが、理解できません。

「統計上、異議申立てを全面的に容れて、課税を取消したケースは極めて少ない」から、どうだと言うのでしょうか。

発言の趣旨がよく分かりません。

  

(なお、記事では申立人の主張が全部認められた割合だけを取り上げていますが、

申立人の主張が一部でも認められている割合は、8.3%(=(331件+44件)/4511件)ということなので、

12人に1人の割合で、申立人の主張の一部が認められているということになります。この割合は少なくないと言えるのではなでしょうか。)

     

ところで、平成23年度の異議申し立ての処理件数が4511件、申立人の主張が一部認められた件数が331件、全部認められた件数が44件とのデータは、

国税庁のホームページの統計情報「その他」「〇不服審査、訴訟事件」のページの異議申立てに関する統計資料から引用されたものです。

下図は、その国税庁作成の統計資料の「〇不服審査、訴訟事件」の「19-1不服審査(1)異議申立て」の部分を引用したものです。

同図の赤で囲った数字が、記事の「 4511 件」、「 331 件」、「 44件」 になります。

つまり、「4511件」は下図の「本年度処理済件数」のことを、「331件」は「一部取消件数」を、また、「44件」は「全部取消件数」のことであったことになります。

税務統計・異議申立て.jpg

   

  

朝日と産経が記事上で、取り上げている異議申立ての件数は、全ての税目についての異議申立ての件数を合算した件数となっています。

つまり、税目の違いは無視されているわけです。

ところで、今回の兵庫県の県教委と税務署で問題となっていたのは源泉所得税に関してです。

源泉所得税という税目についての異議申立てであったわけです。

税務統計では、税目ごとの異議申立件数等の統計も揃っています。

 

  

したがって、源泉所得税に関する異議申立ての件数、申立人が主張が(一部ないし全部)認められた件数は全て把握できます。

源泉所得税の異議申立てに関する統計資料が揃っているのに、わざわざ、その統計を使わないで、各税目ごとの異議申立て件数を集計した資料を使って、今回の異議申立てについて論ずるのは筋を違えているのではないかと考えます。

なぜなら、源泉所得税の異議申立てについては、他の税目との違いがあるかもしれないのに、それを鼻から無視することになると考えるからです。  

   

   

そこで、源泉所得税に関する異議申立件数等を、税務統計から抜き出してみます。

その結果は上図の紫色で囲ってある数字となります。

つまり、

処理件数は計93件、

うち、申立人の主張が全部認められた件数は2件、一部認められた件数は11件、

ということになります。

これは、申立人の主張が全部認められた割合が2.1%(=2件/93件)という結果となります。

申立人の主張が全部認められた割合は、源泉所得税に関した異議申立ての場合でも、さほど割合は変わらないと言えるかも知れません。

ですが、申立人の主張が一部でも認められた割合で見てみますと、その割合は14.0%(=(11件+2件)/93件)ということになります。

7人に1人の割合で、申立人の主張が一部は認められていることになります。

また、今回の源泉の問題は、オール・オア・ナッシングの問題ですので、申立てが認めらることになれば、申立人側の主張が全て認められることになります。

認められるのが一部か、全部かという分類には適さないと言えます。   

                 

記事では、

国税当局が課税処分を取り消すのは極めて異例

と報じていますが、本当に異例と言えるのでしょうか。


「偽裁判」開廷 [困惑]

今年6月には、千葉地裁で、勾留質問の際には書記官の立会いが必要であるのに、事務官が立ち会っていたとの不祥事があったとの報道がありましたが(6月13日のブログ(「勾留質問」)参照)、

今度は札幌地裁でです(12日の毎日jp「札幌地裁:30代書記官を戒告処分 文書紛失を隠蔽工作」)。

 事案は、複数の新聞の報道内容を整理すると、

① 裁判官が、事件を簡裁へ移送する決定書を今年1月に作成し、担当書記官に渡した。

② 担当書記官は、裁判官が渡された決定書を1月下旬頃紛失した。

③ 担当書記官は、4月上旬頃、コンピューターシステムに入力された移送決定のデータを削除し、架空の第1回口頭弁論期日を入力した。

④ 担当書記官は、6月に、原告と被告に対し口頭弁論期日の期日呼出状を送付した。

⑤ 7月に口頭弁論期日が開催され、原告側は代理人の弁護士が出頭。被告は欠席したが答弁書を提出した。

⑥ 4月に着任し、事件を担当することになった裁判官が第1回口頭弁論期日の開催日が(訴訟提起日から見て、異様に)遅いを不審に思い、発覚した。

⑦  札幌簡裁へ8月下旬頃、訴訟記録が送付され、移送手続完了。

という経緯を辿ったようです。

担当書記官は、移送決定の決定書を紛失してしまったことに気付き、パニックとなってしまって、データの書き換えという刹那的な行動をとってしまったのが発端で、引き返せなくなってしまったのでしょう。

決定書のデータを裁判官は当然、バックアップしているでしょうから、

素直に紛失したと書記官が申告してさえいれば、

何とか辻褄合わせがされ、事なきを得てたはずです。

担当書記官の不祥事は、担当裁判官など、その書記官を監督する地位にある役職者の監督不行届きにもなるわけなので、

書記官のミスを、親身になって リカバリー してくれたはずだからです。

ただ、今回の件では、裁判官が異動した4月になって書記官が決定書の紛失に気付いたため、決定書を作成した裁判官に紛失を打ち明ける訳にいかなかったという事情があるのかもしれません。

ですが、担当部の上席書記官や、担当部の部長(裁判官)に紛失を打ち明けるという方法もあったはずです。

先ほども述べましたが、部の書記官の不祥事は、その書記官を監督する地位にある役職者の監督責任に関わることになるため、(自分のことのように)親身になってくれたはずです。

なぜ、こんな事件が起きてしまったのか、不思議な気がします。

   

ところで、この書記官の件について、毎日jpでは、 

札幌地裁は公文書偽造の罪に当たるか検討したが「犯罪性を疑うに至らなかった」として刑事告発しない方針。

と報じています。

共同通信の配信記事(「札幌地裁書記官が「偽裁判」開廷 文書紛失で隠蔽工作」)では、

札幌地裁は「公文書偽造などには当たらないと考えており、刑事告発は予定していない」としている。

YOMIURIONLINE「地裁書記官が書類偽造…札幌」)でも、

同地裁は公文書偽造・同行使などには当たらないとして、刑事告発はしない方針だという。

とそれぞれ報じています。

札幌地裁の広報担当者は、「書記官には期日呼出状を作成する権限があるので、(有印)公文書偽造罪(刑法155条1項)・同行使罪(同法158条1項)には該当しない」と言っているのでしょう。

広報担当者の説明は、その限りでは正しいと言えます。

しかし、公文書の作成権限がある公務員が内容虚偽の公文書を作成し、文書を行使した場合には、

虚偽公文書作成罪(刑法156条1項)・同行使罪(同法158条1項)に該当することになります。

担当書記官の、内容虚偽の期日呼出状の作成と送付が、虚偽公文書作成罪・同行使罪に該当する犯罪であることは自明なことのはずです。

情を汲んで告発しないというのならまだしも、嘘に近い理由を述べて、刑事告発しないというのはどういうつもりなのでしょう。

これも霞が関文学的表現の一例なのでしょうが、 

噴飯ものです。

刑法

第155条(公文書偽造罪)

第1項  行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。

第2項  公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。

第3 前2項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。 

第156条(虚偽公文書作成等)

公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前二条の例による。

第158条(偽造公文書行使等)

第1項  第154条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第1項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。 

 第2項  前項の罪の未遂は、罰する。

 

   

ついでに、新聞各社の記者の資質及び矜持について一言。

裁判所担当の記者であれば、公文書偽造罪と虚偽公文書作成罪の違いくらいは当然知っています。

札幌地裁の広報の「公文書偽造・同行使などには当たらない」という説明が、おかしいことなど重々承知していたはずです。

異議も挟まず、そのまま記事にするとは、どういう了見なのでしょうか。

各社の記者とも、どちらを向いて報道をしているのか疑いたくなります。

同様に噴飯ものだと言えます。

期日呼出状.jpg

 (上図は、名古屋地裁で実際に使われている期日呼出状の一例)


ニセ1級建築士逮捕 [速報]

おととい9日、新潟県警と神奈川県警が ニセ1級建築士の方を一名ずつ逮捕しました(9日のYOMIURI ONLINEの記事「ニセ1級建築士、2人逮捕…神奈川と新潟」)。

国交省は、今年7月11日、新潟県警が逮捕した持田直哉氏を ニセ1級建築士と公表していました(7月11日の「偽造免許証の写しによる非建築士の違法業務等について」参照)。

また、7月31日には、神奈川県警が逮捕した石岡秀逸氏を ニセ1級建築士と公表をしていました(7月31日の「非建築士による建築士詐称について」参照)。

ところで、国交省(住宅局建築指導課)は、7月11日に、ニセ1級建築士を公表した際、

今般、偽造の免許証の写しにより建築士になりすまして建築士事務所に属し業務を行っていた事案が発覚しました。

(中略)

建築士になりすました者について刑事告発を要請する等、次の措置を講じ、厳正に対応してまいります。

(後略)

と宣言していました。

ニセ1級建築士に対しては刑事罰が課されるような厳正な対応をしていくと言っていたわけです。

そのため、この国交省の姿勢からして、ニセ1級建築士の持田氏と石岡氏の逮捕は予定されていたものと言えます。

国交省は、ニセ1級建築士の方を、

7月11日に3人、

7月31日に2人、

8月8日に1人(8月8日の「非一級建築士による一級建築士詐称について」参照)、

9月4日に9人(9月4日の「非一級建築士による一級建築士詐称について」参照)、

それぞれ公表しています。

国交省が公表したニセ1級建築士の方は全部で15人となりますが、

今回逮捕された持田氏は7月11日公表された3人のうちの一人。

石岡氏は7月31日に公表された2人のうちの一人ということになり、

持田氏も石岡氏も この15名の一員です。

持田氏と石岡氏だけが刑事罰を受けるということは考えられないことです。 

そのため、残り13人の方も早晩、建築士法違反等で逮捕されることになることでしょう。


ある建築士事務所の監督処分 [感想]

タマホーム株式会社野々市支店一級建築士事務所が、石川県知事から事務所閉鎖11月(平成24年10月1日から平成25年8月31日まで)の監督処分を受けました(平成24年10月5日の石川県公報第12533号の5~6頁参照)。

今年7月22日のブログ(「ある1級建築士の懲戒事例」)でも触れているところですが、建築士事務所に所属する一級建築士が国土交通大臣から業務停止11月の懲戒処分を受けています。

建築士法は、所属建築士が建築士事務所の業務として行った行為を理由として懲戒処分を受けた場合には、

都道府県知事は建築士事務所の開設者に対し監督処分をすることができると規定しています(建築士法26条2項)。

そのため、タマホーム株式会社野々市支店一級建築士事務所が、石川県から何らかの監督処分を受けることは既定のことだったと言えます。 

(監督処分)

建築士法26条

2項  都道府県知事は、建築士事務所につき次の各号のいずれかに該当する事実がある場合においては、当該建築士事務所の開設者に対し、戒告し、若しくは一年以内の期間を定めて当該建築士事務所の閉鎖を命じ、又は当該建築士事務所の登録を取り消すことができる。

一 ~ 四  (略)

五   建築士事務所に属する建築士が、その属する建築士事務所の業務として行つた行為を理由として、第十条第一項の規定による処分を受けたとき。

六~一〇 (略)

また、宮崎県での同種、同程度の事案 において、1級建築士は業務停止11月の懲戒処分、建築士事務所も事務所閉鎖11月の監督処分を受けていることから、今回の石川県では、最低でも、建築士事務所に対する監督処分が事務所閉鎖11月になるであろうことも合理的に予測が可能でした。

そうした訳で、私の関心は、

建築士事務所の開設者(タマホーム株式会社)が、他県で既に監督処分を受けている場合、その先行した監督処分は監督処分に際し、加重事由としてどのように斟酌されることになるのか

ということと、

石川県の公表時期が何時になるか 

との2点しかありませんでした。

もっとも、建築士事務所に対する監督処分は、戒告・1年以内の事務所閉鎖・登録取消の3種類しかないため、

事務所閉鎖11月よりも重い処分は、(事務所閉鎖期間が1月刻みだとすると、) 登録取消しかないことになります。

建築士法上は、建築士審査会の登録取消の同意をしてくれるのであれば、知事は建築士事務所の登録取消をすることは可能となっています(建築士法26条4項、同法10条4項)。

ですが、建築士事務所の登録取消をするということになれば、一大事です。

関係各方面との調整も必要でしょう。そのため、その決断は、なかなかできないでしょう。

という読みで、私は、この石川県の件も、監督処分としては、事務所閉鎖11月で落ち着くことになるんだろうなと思っていました。

この点は予想どおりでした。

 

 

もう一方の監督処分の公表の時期ですが、私には意外でした。

私は、事務所閉鎖は、建築士の業務停止11月にあわせて、平成24年10月1日からとなると思っていましたので、

石川県による公告は、その10月1日から、1月程度前の8月下旬頃までにはなされるだろうと思っていました。

しかし、9月になっても公告が公報に掲載されません。

結局、石川県公報に公告が掲載されたのは今月5日のことでした。

10月5日の石川県公報第12533号 に、先月(9月)28日に建築士事務所に監督処分をしたとの公告がやっと掲載されることになりました。

ところで、建築士審査会とは、建築士法28条の規定により設置されている知事の付属機関ですが、

知事はこの建築士審査会の同意を得て、建築士事務所の登録の取消、閉鎖を命ずることとなっています。

したがって、知事による建築士事務所の事務所閉鎖の監督処分がなされる場合には、その処分に先立ち、建築士審査会での同意の議決がされていることになります。

今回の石川県での建築士審査会の開催状況ですが、8月10日に、「建築士事務所に対する監督処分について」を議題の一つとして審査会が開催されています(石川県のホームページの「石川県建築士審査会」のページ参照)。

それなのに、石川県知事による監督処分がなされたのは9月28日のことで、建築士審査会開催から1月半ほど経過した後のことです。

何が監督処分を差し控える理由だったのでしょうか。

私は当初、石川県が、建築士事務所の開設者(タマホーム(株))に、少しでもダメージを与えないようにするため、事務所閉鎖の直前に公表したのではないか、

つまり、タマホーム(株)に配慮した措置を採ったのではないかと思いました。

ですが、もしかしたら、水面下で、建築士事務所の登録取消の監督処分をするかどうかでの、やりとりがあったのかも知れないと思い直すようになりました。

真相はどちらなんでしょう。


相続定期預金ってなに ? [困惑]

先月25日の中日新聞朝刊の地域経済欄に、「相続で預金流出を 防げ」と題した記事が載っていました。

このローカル紙の記事は、

名古屋銀行という名古屋の地銀が今年4月に、愛知・岐阜・三重の三県の地銀で初めて、店頭金利に年0.5%を上乗せする相続定期預金を開始したところ、既に 352件、預金額33億円以上の預金が集まった。

相続定期預金の扱いは、愛知・岐阜・三重の三県では、名古屋銀行のほか、百五銀行(三重県)、十六銀行(岐阜県)、第三銀行(岐阜県)、大垣共立銀行(岐阜県)もサービスを開始し、サービスを拡充して顧客の囲い込みに励んでいる。

という、どうということもない、ものでした。

私はこの記事を目にするまで、「相続定期預金」 という言葉自体を聞いたことがありませんでした。

それで、調べてやろうという気になり、相続定期預金について調べてみました。

ですが、この相続定期預金、全く大したものではありませんでした。

「相続したお金を預金してくれるなら、ちょっとだけ金利を上乗せします」というだけのものです。

ほんとにちょっとの優遇です。

しかも、この優遇の内容も、銀行によって大いに違っています。

例えば、金利の上乗せについて言えば、

名古屋銀行の場合だと、預入期間3ヶ月につき、店頭表示金利 +0.5%、ということなのですが、

広島に本店のある 中国銀行の場合ですと、預入期間3ヶ月につき、店頭表示金利 +1.0%

ということになっています。

また、金利の上乗せで優遇してくれる期間(=預入期間)も、3ヶ月とか、6ヶ月で、優遇期間は長くても1年だけで、

条件が悪いところだと、優遇される期間も短くなっています。

「相続定期預金」をキーワードにして、グーグル検索をしてみれば、上乗せ金利が、どこが高くて、どこが低いか、また、預入期間が 3ヶ月となっているか、あるいは6ヶ月となっているかなど、

条件の有利不利は比較検討が容易に可能です。

銀行もそんなことは重々分かっていることなのでしょうが、優遇の内容が渋いところは、とことん渋く、金利の上乗せもちょぼっとです。

そんな銀行でも相続定期預金と銘打って預金を集めるつもりなわけで、その自信はどこから出てくるのか不思議な気がします。

どうやって預金を集めのでしょう、関心があるところです。

この相続定期預金ですが、そもそも、大して有利な金融商品だとは言えません。

もし、仮に、1000万円を、+1.0%の金利を上乗せして、3ヶ月の預入期間の相続定期預金をしたとして、

余分に利息として受け取ることが出来る利息の金額は

2万5000円

に過ぎません(= 1000万円 × 1.0 % × 3ヶ月/12ヶ月)。

こんなものを、預金者に有利な金融商品だとでも言うのでしょうか。

新聞では、

名古屋銀行の担当者は「高齢者の関心が高い。サービスを強化し、資産が他行に流出することを防ぎたい」と語る。

となっていて、

銀行が、他行に預金が流出することを防止するため、この相続定期預金という商品を開発したかのような表現となっています。

 

しかし、名古屋銀行の場合、預金は2兆7560億円。他方、貸出金が2兆0550億円、有価証券が7940億円となっています(金融庁のホームページの「都道府県別の中小・地域金融機関一覧表」の名古屋銀行の項目参照)

名古屋銀行が保有する有価証券7940億円のうち、国債残高がどれだけあるかは不明です。

ですが、東京商工リサーチの8月のレポート「銀行117行 2012年3月期単独決算ベース預証率調査 ~国債保有は166兆円~」によりますと、

第二地銀の場合ですと、有価証券に占める「国債」の割合は平均で 49.6%ということだそうです。

第二地銀に分類される名古屋銀行にこの比率を掛けると、3938億円となります。

したがって、名古屋銀行の国債残高は、3938億円ぐらいだろうと推計が可能です。

つまり、名古屋銀行は、預金者から与かった預金を貸出す先がないため、多額の国債を購入している状況にあると言えます。

これ以上、相続定期預金の募集と銘打って、預金を熱心に集める必要などあるとは言えないのではないかと考えられます。

そのため、名古屋銀行の担当者が言っている、「資産を他行に流出することを防ぎたい」という理由は、とても嘘っぽく聞こえるというわけです。

 

私などは、上乗せ金利を餌にして、相続によって まとまった預金を持っている黄金持ちを囲い込んで、

その後に、手数料が高い、投資信託や保険を売りつける魂胆なんだろうなとの穿った考えを持ってしまいます。

 

この相続定期預金ですが、そのうち、恥ずかしげもなく、メガバンクも参入してくるのではないかと想像しますが、

その際に、(死ぬほど国債を保有している) メガバンクも、新聞記事の名古屋銀行の担当者と同じように、

「高齢者の関心が高い。サービスを強化し、資産が他行に流出することを防ぎたい」とでも言うのでしょうか。

 

今後も経過観察を続けたいと思います。 


判決の更正決定申立と事件番号 [豆知識]

裁判所の宣告した判決に計算違いや誤記がある場合には、裁判所に判決の更正という決定(= 裁判)をしてもらい、判決の記載を訂正してもらうことが可能です (民事訴訟法257条1項)。

この判決の更正は、裁判所が職権でするだけでなく、原被告などの当事者が、裁判所に申立てて、裁判所に判断をしてもらうこともできます。

民事訴訟法257条1項

判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。

この判決の更正決定申立ですが、当事者が申立てをした場合には、雑事件として事件番号が付されていました(確か、「平成〇〇年(雑)第〇〇〇〇〇号」という表記だった記憶です。)。

ですが、裁判事務の見直しということで、平成18年から、

雑事件として、事件番号を独自に付けることは取り止めになった、

ということだそうです。

ご存じでしたでしょうか。

私も、先月、判決の更正決定申立てをした事件があり、その際、担当書記官に教えてもらって、初めて知りました。

「えぇ~、本当かよ」と思って、他の書記官2人にも当たってみましたが、同じ答でした。

裏取りをした書記官2人には、「そのことを確認できる公表された資料は何かないのか」とも尋ねました。

が、回答は「最高裁が出している通達にしか載ってないので、公表されたものはないのではないか」というものでした。

そのため、文献的根拠は、残念ながら、現時点では示すことが出来ません。

調査続行です。


トライクは、ヘルメットの着用が不要なんだ [豆知識]

昨夜深更、テレビを付けたら、南明奈(「アッキーナ」) が三輪バイクを運転して登場しました。 

バイクを下りた彼女は、「ヘルメットは要らないんです」と言っていました。

よもや、テレビ局が、番組に出たタレントに間違ったことを言わせるわけがないわけで、

アッキーナが言うように、

ヘルメットを着用しないで、三輪バイクを運転しても、道交通法違反とはならない

というのは本当なのでしょう。

そう言えば、最近、50歳頃のいい歳をしたオッサンが、バギーカーのような三輪車をヘルメットを着用しないで乗り回しているのをよく見かけますが、

私は横着で、ヘルメットを着用していないと思っていました。

でも、アッキーナと同じだったんですね。

迂闊でした。

そこで、アッキーナが乗っていた三輪バイクのことを調べててみました。

この三輪バイクは、「トライク(Trike) 」 と呼ばれている乗り物だそうです。

そして、道交法上では、車と完全に同じ扱いを受けることになっているので、

(平成21年9月1日施行の道路交通法施行規則により、二輪車として見なされる三輪バイクを除き、)

ヘルメットの着用は不要ということになるとのことです。

アッキーナも、50歳頃のいい歳をしたオッサンも、道交法違反ではないというのは正解でした。

このトライクですが、楽天市場のショップを覗いてみると、安いのであれば、10万円程度が買えるようですし、

購入手続も複雑ではないようです。

(おまけ)

アッキーナが乗っているトライクは、柾虎チャンネル(まさとら)さんという方のブログ(「Stay hungry, stay foolish. 」)の「嬉しいことに南明奈(アッキーナ)がトライク(三輪バイク)仲間らしい」という記事中にアップされていますので、関心がある方は見てみて下さい。

なお、アッキーナは、番組の中で、このトライクに改造費等で 100万円かかっていると言っていました。


過払いの返還金に対する課税 [豆知識]

過払いを理由として、貸金業者から返還を受けた返還金には、いかなる課税がされるかについては、 

国税庁の質疑応答事例「返還を受けた利息制限法の制限超過利息」で、簡潔な説明がなされています。

返還金について課税関係は生じないが、返還金に付された利息については、その支払を受けた日の属する年分の雑所得の金額の計算上総収入金額に算入される

というのがその回答となっています。

貸金業者が、利息だと言っていた返済の一部(ないし全部)が、実は、元本を返済していただけのことなので、

返還金そのものは、「返還金は貸していたお金の元本を返してもらった 」のと同じことになります。

儲けも、損もないわけですので、課税は生じないというわけです。

でも、返還金に付された(年5%の)過払利息については別です。

元本を運用して儲けたことと一緒になるので、その儲けとなった利息については課税の対象となるわけです。

そして、その利息の所得区分は、(税務当局は)一時所得ではなく、雑所得だと言っているわけです(国税庁のタックスアンサー「No.1300 所得の区分のあらまし」参照)。

意外や、この程度の理解も出来ていない方が、多くお見えのようなので、ブログのネタとさせてもらいました。