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相続定期預金ってなに ? [困惑]

先月25日の中日新聞朝刊の地域経済欄に、「相続で預金流出を 防げ」と題した記事が載っていました。

このローカル紙の記事は、

名古屋銀行という名古屋の地銀が今年4月に、愛知・岐阜・三重の三県の地銀で初めて、店頭金利に年0.5%を上乗せする相続定期預金を開始したところ、既に 352件、預金額33億円以上の預金が集まった。

相続定期預金の扱いは、愛知・岐阜・三重の三県では、名古屋銀行のほか、百五銀行(三重県)、十六銀行(岐阜県)、第三銀行(岐阜県)、大垣共立銀行(岐阜県)もサービスを開始し、サービスを拡充して顧客の囲い込みに励んでいる。

という、どうということもない、ものでした。

私はこの記事を目にするまで、「相続定期預金」 という言葉自体を聞いたことがありませんでした。

それで、調べてやろうという気になり、相続定期預金について調べてみました。

ですが、この相続定期預金、全く大したものではありませんでした。

「相続したお金を預金してくれるなら、ちょっとだけ金利を上乗せします」というだけのものです。

ほんとにちょっとの優遇です。

しかも、この優遇の内容も、銀行によって大いに違っています。

例えば、金利の上乗せについて言えば、

名古屋銀行の場合だと、預入期間3ヶ月につき、店頭表示金利 +0.5%、ということなのですが、

広島に本店のある 中国銀行の場合ですと、預入期間3ヶ月につき、店頭表示金利 +1.0%

ということになっています。

また、金利の上乗せで優遇してくれる期間(=預入期間)も、3ヶ月とか、6ヶ月で、優遇期間は長くても1年だけで、

条件が悪いところだと、優遇される期間も短くなっています。

「相続定期預金」をキーワードにして、グーグル検索をしてみれば、上乗せ金利が、どこが高くて、どこが低いか、また、預入期間が 3ヶ月となっているか、あるいは6ヶ月となっているかなど、

条件の有利不利は比較検討が容易に可能です。

銀行もそんなことは重々分かっていることなのでしょうが、優遇の内容が渋いところは、とことん渋く、金利の上乗せもちょぼっとです。

そんな銀行でも相続定期預金と銘打って預金を集めるつもりなわけで、その自信はどこから出てくるのか不思議な気がします。

どうやって預金を集めのでしょう、関心があるところです。

この相続定期預金ですが、そもそも、大して有利な金融商品だとは言えません。

もし、仮に、1000万円を、+1.0%の金利を上乗せして、3ヶ月の預入期間の相続定期預金をしたとして、

余分に利息として受け取ることが出来る利息の金額は

2万5000円

に過ぎません(= 1000万円 × 1.0 % × 3ヶ月/12ヶ月)。

こんなものを、預金者に有利な金融商品だとでも言うのでしょうか。

新聞では、

名古屋銀行の担当者は「高齢者の関心が高い。サービスを強化し、資産が他行に流出することを防ぎたい」と語る。

となっていて、

銀行が、他行に預金が流出することを防止するため、この相続定期預金という商品を開発したかのような表現となっています。

 

しかし、名古屋銀行の場合、預金は2兆7560億円。他方、貸出金が2兆0550億円、有価証券が7940億円となっています(金融庁のホームページの「都道府県別の中小・地域金融機関一覧表」の名古屋銀行の項目参照)

名古屋銀行が保有する有価証券7940億円のうち、国債残高がどれだけあるかは不明です。

ですが、東京商工リサーチの8月のレポート「銀行117行 2012年3月期単独決算ベース預証率調査 ~国債保有は166兆円~」によりますと、

第二地銀の場合ですと、有価証券に占める「国債」の割合は平均で 49.6%ということだそうです。

第二地銀に分類される名古屋銀行にこの比率を掛けると、3938億円となります。

したがって、名古屋銀行の国債残高は、3938億円ぐらいだろうと推計が可能です。

つまり、名古屋銀行は、預金者から与かった預金を貸出す先がないため、多額の国債を購入している状況にあると言えます。

これ以上、相続定期預金の募集と銘打って、預金を熱心に集める必要などあるとは言えないのではないかと考えられます。

そのため、名古屋銀行の担当者が言っている、「資産を他行に流出することを防ぎたい」という理由は、とても嘘っぽく聞こえるというわけです。

 

私などは、上乗せ金利を餌にして、相続によって まとまった預金を持っている黄金持ちを囲い込んで、

その後に、手数料が高い、投資信託や保険を売りつける魂胆なんだろうなとの穿った考えを持ってしまいます。

 

この相続定期預金ですが、そのうち、恥ずかしげもなく、メガバンクも参入してくるのではないかと想像しますが、

その際に、(死ぬほど国債を保有している) メガバンクも、新聞記事の名古屋銀行の担当者と同じように、

「高齢者の関心が高い。サービスを強化し、資産が他行に流出することを防ぎたい」とでも言うのでしょうか。

 

今後も経過観察を続けたいと思います。