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ある建築士事務所の監督処分 [感想]

タマホーム株式会社野々市支店一級建築士事務所が、石川県知事から事務所閉鎖11月(平成24年10月1日から平成25年8月31日まで)の監督処分を受けました(平成24年10月5日の石川県公報第12533号の5~6頁参照)。

今年7月22日のブログ(「ある1級建築士の懲戒事例」)でも触れているところですが、建築士事務所に所属する一級建築士が国土交通大臣から業務停止11月の懲戒処分を受けています。

建築士法は、所属建築士が建築士事務所の業務として行った行為を理由として懲戒処分を受けた場合には、

都道府県知事は建築士事務所の開設者に対し監督処分をすることができると規定しています(建築士法26条2項)。

そのため、タマホーム株式会社野々市支店一級建築士事務所が、石川県から何らかの監督処分を受けることは既定のことだったと言えます。 

(監督処分)

建築士法26条

2項  都道府県知事は、建築士事務所につき次の各号のいずれかに該当する事実がある場合においては、当該建築士事務所の開設者に対し、戒告し、若しくは一年以内の期間を定めて当該建築士事務所の閉鎖を命じ、又は当該建築士事務所の登録を取り消すことができる。

一 ~ 四  (略)

五   建築士事務所に属する建築士が、その属する建築士事務所の業務として行つた行為を理由として、第十条第一項の規定による処分を受けたとき。

六~一〇 (略)

また、宮崎県での同種、同程度の事案 において、1級建築士は業務停止11月の懲戒処分、建築士事務所も事務所閉鎖11月の監督処分を受けていることから、今回の石川県では、最低でも、建築士事務所に対する監督処分が事務所閉鎖11月になるであろうことも合理的に予測が可能でした。

そうした訳で、私の関心は、

建築士事務所の開設者(タマホーム株式会社)が、他県で既に監督処分を受けている場合、その先行した監督処分は監督処分に際し、加重事由としてどのように斟酌されることになるのか

ということと、

石川県の公表時期が何時になるか 

との2点しかありませんでした。

もっとも、建築士事務所に対する監督処分は、戒告・1年以内の事務所閉鎖・登録取消の3種類しかないため、

事務所閉鎖11月よりも重い処分は、(事務所閉鎖期間が1月刻みだとすると、) 登録取消しかないことになります。

建築士法上は、建築士審査会の登録取消の同意をしてくれるのであれば、知事は建築士事務所の登録取消をすることは可能となっています(建築士法26条4項、同法10条4項)。

ですが、建築士事務所の登録取消をするということになれば、一大事です。

関係各方面との調整も必要でしょう。そのため、その決断は、なかなかできないでしょう。

という読みで、私は、この石川県の件も、監督処分としては、事務所閉鎖11月で落ち着くことになるんだろうなと思っていました。

この点は予想どおりでした。

 

 

もう一方の監督処分の公表の時期ですが、私には意外でした。

私は、事務所閉鎖は、建築士の業務停止11月にあわせて、平成24年10月1日からとなると思っていましたので、

石川県による公告は、その10月1日から、1月程度前の8月下旬頃までにはなされるだろうと思っていました。

しかし、9月になっても公告が公報に掲載されません。

結局、石川県公報に公告が掲載されたのは今月5日のことでした。

10月5日の石川県公報第12533号 に、先月(9月)28日に建築士事務所に監督処分をしたとの公告がやっと掲載されることになりました。

ところで、建築士審査会とは、建築士法28条の規定により設置されている知事の付属機関ですが、

知事はこの建築士審査会の同意を得て、建築士事務所の登録の取消、閉鎖を命ずることとなっています。

したがって、知事による建築士事務所の事務所閉鎖の監督処分がなされる場合には、その処分に先立ち、建築士審査会での同意の議決がされていることになります。

今回の石川県での建築士審査会の開催状況ですが、8月10日に、「建築士事務所に対する監督処分について」を議題の一つとして審査会が開催されています(石川県のホームページの「石川県建築士審査会」のページ参照)。

それなのに、石川県知事による監督処分がなされたのは9月28日のことで、建築士審査会開催から1月半ほど経過した後のことです。

何が監督処分を差し控える理由だったのでしょうか。

私は当初、石川県が、建築士事務所の開設者(タマホーム(株))に、少しでもダメージを与えないようにするため、事務所閉鎖の直前に公表したのではないか、

つまり、タマホーム(株)に配慮した措置を採ったのではないかと思いました。

ですが、もしかしたら、水面下で、建築士事務所の登録取消の監督処分をするかどうかでの、やりとりがあったのかも知れないと思い直すようになりました。

真相はどちらなんでしょう。