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空っぽな箱 [困惑]

MRI インターナショル事件は、

昨年(2012年)12月に、商品投資家から金融取引等監視委員会(監視委)に、配当償還が遅延しているとの情報が寄せられ、

監視委が今年3月4日に検査に着手し、発覚しました(ロイター4月26日の記事「米MRIインターナショナルの登録取消 、投資資金を配当に流用=金融庁」)。

   

金融商品取引業者などに対する証券検査は、監視委が担当することとなっていますが、

監視委は毎年度の初頭に、

証券検査基本方針及び証券検査基本計画

を策定し、その計画に基づいて検査を実施します(金融庁HPの「平成24年度証券検査基本方針及び証券検査基本計画について」、「金融商品取引業者等の証券検査について」参照)。

この平成24年度証券検査基本方針及び証券検査基本計画 では、   

証券業者や金融先物業者などの第一種金融取引業者については年間150社を対象とした 検査計画 を定めていました。

そして、それ以外の、

昨年問題となったAIJ投資顧問のような投資助言・代理業者 、あるいは、 MRI インターナショルのように第二種金融商品取引業者に対する検査については、

「随時」

としていました。

平成24年度証券検査基本方針及び証券検査基本計画は、その説明として、

業態、規模その他の特性及び証券監視委の人的資源に比し検査対象者極めて多数に及んでいる状況等を踏まえ、

これまでの集中的な検査に基づく建議により改正された法令等の遵守状況、自主規制機関への加入状況等を勘案しつつ、監督部局からの情報、外部から寄せられる情報等を積極的に活用し、戸別に検査実施の優先度を判断する、

との説明を加えていました(10頁の第2、2. (2) ①「ロ. 随時検査を行う対象」参照)。

   

この説明ですが、

私には、監督委が、   

第二種や投資顧問は数が多いので 検査計画を立てるだけの人手がいないため、検査計画など立てることなどできない。

なので、他からのタレ込みがあれば検査をしますが、そのようなことがなければ検査しません。

と、

開き直って言っているのと、同じように聞こえてしまいます。

   

そんな無責任なことを言っていることなど、ありえないことなのですが。  

平成23年度の検査実施状況.jpg 

上図は、平成24年6月29日に証券取引等監視委員会が公表した「証券取引等監視委員会の活動状況」の本文32頁の表「平成23年度の検査実施状況」を引用したもの。

平成23年度における第二種金融商品取引業者への検査が14件、投資顧問・代理業者への検査が40件だったということが分かります。

第二種業者は1294社、投資顧問・代理業者は1108社もあるので、今の態勢のままで、証券取引等監視委員会に第二種業者や投資顧問業者などの検査をやれというのは、現実的には無理だと言えます。

仮に、第二種業者は年30社を検査、投資顧問業者は年50社を検査するとしても、

検査の頻度が第二種は40年に1度、投資顧問は22年に1度、

となりますので、そんな計画、恥ずかしくて示すことなどできないでしょう。

この機会に、組織の見直し等を含めた、実りのある議論をしていただきたいと思います。

 総括表(証券取引等監視委員会).jpg

上図は、平成24年6月29日に証券取引等監視委員会が公表した「証券取引等監視委員会の活動状況」の附属資料178頁の総括表を引用したものですが、この総括表からは、

平成4年度~平成23年度の間の第二種金融商品取引業者の検査総数は45件、

他方、投資顧問業者へのそれは332件、

であったことが分かります。

第二種金融商品取引業者は、よっぽどのことがなければ検査されないということが分かります。

                                                                                                                            

                                                                       

   

(参考)

「平成24年度証券検査基本方針及び証券検査基本計画」の項目は下記のとおりです。

項目立てだけは、豪華絢爛です。

第1 証券検査基本方針

  1. 具体的な考え方 

   (1) 証券検査の役割

   (2) 検査対象業者の多様化・増加

   (3) 検証分野の拡張等

   (4) 検査対象先の特性に応じた効率的・効果的で実効性ある証券検査の実施

  2. 検査実施方針

   (1) ① 業態その他の特性に着目した検証

          イ. 金融商品取引業者等の市場仲介機能に係る検証

          ロ. 法人関係情報の管理(不公正な内部者取引の未然防止)等に係る検証

          ハ. 公正な価格形成を阻害するおそれのある行為の検証

          ニ. 投資勧誘の状況に係る検証

          ホ. 投資運用業者等の業務の適切性及び法令等遵守にう係る検証

          ヘ. 信用格付業者の業務管理態勢の検証

          ト. ファンド業者の法令等遵守状況の検証

         チ. 投資助言・代理業者の法令順守状況の検証

         リ. 自主規制機関の機能発揮のための検証

        ヌ.  無登録業者に対する対応

      ② 内部管理態勢・財務の健全性等に係る検証

        イ. 内部管理態勢等に係る検証

        ロ. システムリスク管理態勢に係る検証

        ハ. 財務の健全性に関する検証

   (2) 効率的・効果的で実効性ある検査に向けた取組み

      ① 業態その他の特性等を踏まえたリスクに基づく検査実施の優先度の判断

       イ. 継続的に検証を行う対象

       ロ. 随時検査を行う対象

       ハ. 無登録業者

      ② 実効性のある検査の実施

       イ. 予告検査の実施

       ロ. 双方向の対話の充実

       ハ. 検査の実効性を阻害する行為に対する厳正な対処

      ③ 金融庁・財務局等との連携強化

      ④ 自主規制機関との連携

      ⑤ 検査基本指針及び検査マニュアルの見直し・公表

第2 証券検査基本計画

   1. 基本的考え方

   2. 証券検査基本計画


ユニクロの離職率 [感想]

ユニクロの離職率は、

3年以内で 平均 46.2 %

となるようです(東洋経済ONLINE2013年3月12日の風間直樹記者の記事「ユニクロ 疲弊する職場」)。

ユニクロ柳井会長は、

離職率の高さは、

日本人社員は、頑張りが足りない人が多いため、

と本気で、お考えのようです(先週23日の朝日新聞デジタル「年収百万円も仕方ない・ブラック企業批判は誤解 世界同一賃金、ユニクロ柳井氏に聞く」)。 

お隣の韓国の場合ですと、ユニクロも びっくり、

3年以内の離職率は 8 割

を超過することになっているようです。

ユニクロも、韓国に行けば、離職率が高いということにはならないようです。

ユニクロがどのような会社を目指そうが、それは勝手です。

私自身、ユニクロは好きですし、2020年の売上高目標5兆円も達成してもらいたいと思っています。

ですが、新卒者が誤解して入社してしまい、その誤解に気付いて退職を退職してしまうような事態となることは、

不幸なことです。

そのような事態とならないよう、求職の際には離職率を開示して、分かって入社する ガッツのある人だけを採用していただくようにしていただきたいとは思います。 

(備考)

韓国のデータは、新聞・雑誌記事横断検索で検索した、

朝鮮日報2007年5月21日の記事「韓国で新入社員の3割が1年以内に退職するワケ(上)」

の記事を根拠にしています。

記事には、

今年(2007年)1月、就職専門サイト「ジョブコリア」が企業855社を対象に調査した結果、入社1年以内に会社を辞めた「超短期退職者」の比率が30.1%に達していたことが分かった。

これは、新入社員3人のうち1人が入社1年以内に会社を辞めたことを示すものだ。

また統計庁の「06年青年層経済活動人口追加調査」でも、青年求職者の68.9%が2年以内に初めての職場を辞めていたことが明らかになった。

一方、3年以上1つの職場に勤めた比率はわずか18.3%にとどまった。

と書かれています。

これらのことは、室谷克実氏著「悪韓論」(82頁)で知ったことです。


二次被害に注意 [怒り]

「mriインターナショル」 をキーワードにしてグーグル検索をすると、

下のキャプチャー画面が現れます。

最初の

mriインターナショル に関連した広告

には、

詐欺被害解決ホットライン - sagihigai-hotline.com

と、

mriインターナショル評判 - sagihigai-henkin.jp

の広告が出てきます。

詐欺被害解決ホットラインの方は行政書士の広告、

もう一方は、探偵業者の方の広告のようです。

何を行って、詐欺被害の回復を図るというのでしょうか。

被害者の方が、二次被害に遭われるのではないかと心配です。

グーグル検索(MRIインターナショナル).jpg

(参考)

弁護士法

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

第72条  弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。


今度は MRI インターナショナル

診療報酬請求権を債券化 して販売していた MRI インターナショナル が、

顧客約8,700人から預かった資産約1365億円を運用せず、預け金を配当や社員の給料や経費などの支払いにまわすなどしており、預かり資産が流出資金の大半が失われている可能性がある

とのことです(朝日新聞デジタルの記事「国内顧客資産1300億円消失か 監視委、処分勧告へ」)。

この朝日の記事からは明かでありませんが、日経(「顧客資産1300億円消失か  米MRI、金融庁が行政処分」)によると、

金融庁や証券取引等関し委員会はAIJ事件後、顧客の資産を預かる投資顧問などへの検査を強化していた、

その流れで、証券取引等監視委員会が、MRI インターナショナルに 今年3月から検査に入り、顧客資産の一部が不明である点を把握し、

今回の件が発覚したようです。

この MRI インターナショナル が販売していた、診療報酬請求権を証券化した金融商品は、

円建てで投資可能で、しかも元利確定、

年利は 6.0~8.5 %、

為替リスクはなし、

というものですが、そんな有利な金融商品、あるわけがありません。

5年以上前に出版された、 

2007年(平成19年)8月30日発行の週刊ダイヤモンド金融商品特別取材班編著

知らない人だけが損をする 投資信託の罠」 

では、このMRI インターナショナル の金融商品を取り上げています。

「元利確定で年利 6~8 % 「診療報酬請求権」の秘密」

と題する記事がそれで、タイトル脇の要約には、

にわかに信じがたいような超高利回り金融商品がある。

しかし、あらゆる金融商品がそうであるように、高リターンの裏には高いリスクがあるはずである。

落とし穴はないのか検証してみたら、さまざまな落とし穴が仕掛けられていた。

と書かれています(同書75~80頁)。

のっけから「怪しげ」と言っているかのようです。

この記事によると、MRI インターナショナル は「顧客は日本に約 7,800人いる(2006年12月現在」と

と公表していたということで、6年以上前の時点で、今と さほど変わらない顧客を既に集めていたようです。

また、MRI インターナショナルに取材申し込みをしたが、

「基本的に取材は受けない方針」ということで回答をもらえなかったということです。

記事は、為替リスクがない点のほかに、端的に、

「こんなにいい商品? を なぜ機関投資家がほかっておくのか」

と疑問点を述べ、MRI インターナショナル の金融商品が胡散臭いことを、するどく、逆説的に、指摘しています。

この記事を読んでいれば、 MRI インターナショナル の金融商品を買う人などいないのではないかと思います。

MRI インターナショナル が販売していた診療報酬請求権を証券化した金融商品の方が、

昨年のAIJ投資顧問のよりも、よほど 怪しげに思えるのですが、

豊田商事事件の場合と同様に、売り子を使って、高齢者に押し売りでもしていたのでしょうか。

そんなことよりも何よりも、こんな会社が、AIJよりも長生きし、 6 年以上も 延命できていたこと自体、驚きです。

金融当局は何をしていたのでしょう。

知らない人だけが損をする投資信託の罠

知らない人だけが損をする投資信託の罠

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2007/08/31
  • メディア: 単行本



 (参考)

MRI インターナショナル の金融商品取引業者登録は、関東財務局長(金商)第1881号で、登録年月日は平成20年6月4日となります。

また、鈴木順造という人物が日本での代表者のようですが、 MRI インターナショナル は日本では法人登記はしていない模様です。


嘘吐き [読書]

文書の前後から、「嘘吐き」と書いて、

「うそつき」

と読むのかなということは何となく分かりました。

恥ずかしいことですが、実は、全く知りませんでした。

私は、「嘘つき」の「つき」に漢字を当てるのなら、

「付き」って漢字を当てるんだろうなというレベルでした。

「吐き」が正解ですが、意外な感じがします。

皆さんは、「嘘吐き」、ご存じでしたでしょうか。

  

時事通信社出身の室谷克実氏著の「悪韓論」の中には、

この単語が、これでもか、これでもか、というほど出てきます。

本には、「本当なの?」と、結構、驚きのお隣の国の事情が詳細に書かれています。

前著は過去に触れたものでしたが、今度は今現在のことです。

論述されている内容には、全て、朝鮮日報、中央日報等の新聞記事を引用して、その論拠を示されています。

  

ですので、書かれている内容は、大げさに誇張されているのかもしれませんが、

データの裏付けもあるようですので、

嘘ではなく、多分、本当のことなのでしょう。

  

  

それなりに勉強になりました。

本書のことを、「(私を含めた一般の人が、) 日頃、見聞きする機会がないデータを、

コンパクトにまとめたデータ集」と考えて見れば、

類書はないようですので、大変参考になるだけでなく、貴重ではないかと思います。

悪韓論 (新潮新書)

悪韓論 (新潮新書)

  • 作者: 室谷 克実
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/04/17
  • メディア: 単行本



医療機関債の有価証券性 [検討]

医療機関債の販売を巡る詐欺事件を受けて、警察庁が今年2月27日、厚生労働省に対して、金融庁と協議して、医療機関債を金融商品取引法の規制対象となる「有価証券」に指定するよう法整備を要請したということです(2月28日の日経電子版「医療機関債を『有価証券』に指定を 警察庁が厚労省法整備要請。」)。

ここで言われている 医療機関債詐欺事件とは、

川野伝二郎容疑者を首謀者としたグループが、

医療法人社団「みらい会」の名前で、14都府県の111人の被害者から計 4億2900万円を、

また、

医療法人社団「真匡(しんこう)会」の名前で、11億8000万円を、

それぞれ騙し取ったとの一連の事件のことで、医療機関債の被害総額は約20億円ではないかといわれています。

 

  

  

今年2月6日以降、大阪府警が関係者を逮捕し、全容解明に向けて捜査を続けている状況にあります(産経ニュースwestの2月7日の「12億円秘匿?捜索するも金庫に現金ゼロ! 医療機関債詐欺事件の法人社団」、同月28日の「111人から4億2900万円詐取 山梨県の医療法人でも販売 元理事ら6人を再逮捕」参照)。

金融商品取引法上の「有価証券」については、登録業者しか取り扱えないことになっていますが、医療機関債は、現行法上は「有価証券」ではありません。

そのため、医療機関債は、登録業者でなくても、医療法人でありさえすれば、厚労省のガイドラインに沿って発行することが可能となっています。 

そう言うわけで、警察庁が、厚労省に、金融庁と協議して、

医療機関債を金融商品取引法の規制対象となる「有価証券」に指定するよう

要請したのはもっともと言えばもっともです。

学校債も、かつては同じであったわけで(グーグル検索の結果画面参照)、

金融商品取引法への全面改正の際に、「有価証券」指定を受けることとなったわけですから(大和総研グループのHPの2007年8月15日コラム「学校債が有価証券指定へ」参照)。

  

ですが、医療機関債が、金融商品取引法の「有価証券」指定を受ければ、全てが解決すると言った単純な話ではありません。

川野伝二郎容疑者を首謀者としたグループは、医療機関債を扱う以前には、

08年6月設立の石油会社「アフリカントラスト(現ワールド・リソースコミュニケーション)」という会社を使って、「ガーナでのダイヤモンド採掘で学校や病院を建てる」と偽って、社債販売で約78億円を集め、

10年1月に設立した「東亜エナジー」(東京都新宿区)を使って、東南アジアの石油会社の日本営業窓口と偽って、社債販売で約27億円を集め

ていました(2012年2月8日の毎日jp「医療債詐欺:7社使い126億円販売 商材替え次々」)。

  

           

社債は金融商品取引法上の有価証券です(同法第2条第1項第5号)。

登録業者しか販売できないこととなっています。

川野伝二次郎一派はそんなことおかまいなしです。

  

川野伝二次郎一派が 08年6月から社債を用いた詐欺を働いていたにもかかわらず、警察沙汰となることなく、ずっと放置されていたことが一番の問題なのであって、

医療機関債が(金融商品取引法上の)有価証券でなかったことなど、直接は関係ないことです。


田代元検事、不起訴不当だそうだ [速報]

検察審査会が、小沢事件の田代政弘検事の不起訴を不当議決したとの速報が出てます(NHK「虚偽報告の元検事 不起訴不当」)。

田代検事は元ですが、他の方はどうなっているのでしょう。


憲法記念日の最高裁長官談話 [感想]

最高裁長官が、憲法記念日の前日に談話を述べられることが恒例となっているようです(最高裁のHP「憲法記念日を迎えるに当たって」参照)。

現在の最高裁長官は 竹﨑博允長官ですが昭和19年7月生まれだということですので、

何事もなければ、

竹﨑長官が憲法記念日の最高裁長官談話を今年、来年と述べられる

ことになります。

一昨年(2011年)の憲法記念日の際に、竹崎長官が談話を述べられた際の日テレニュースが、ニュース映像の動画を含め、閲覧可能です。

竹﨑長官は、その年の3月のあった東日本大震災の復興のため、

「司法もまた、国の機関として復興のため最大限の努力をしてまいりたいと思います」

等と、司法記者クラブの記者とおぼしき人たちを前にして、述べられています(日テレNEWS24震災復興に最大限の努力したい~最高裁長官」の動画 参照)。

今年も、憲法記念日を前にした5月2日に、竹﨑長官は 談話を述べられることになるのでしょう。

その談話に際して、

今月8日に報道された田中耕太郎長官の米国大使との密談 に関しての談話はあるのでしょうか。

また、

司法記者クラブの記者の方から、密談に関した質問はなされるのでしょうか。

裁判の内容のことではないので、「裁判官は弁明せず」は通用しません。

ですが、何もなかったかのように談話は終了との、

民主主義国家ではありえないようなことが起こるのではないかと、ひとり危ぶんでいます。


同性同名の別人に訴状を送達した事例 [検討]

医療機関債の詐欺事件に関連した、民事事件で、

被告でない別人に、訴状が送達されたことを一昨日(18日)、読売新聞が報じています(YOMIURI ONLINEの記事「損害賠償提訴の相手、同姓同名の別人だった」参照)。

記事によると、

埼玉県志木市の職員が、原告代理人弁護士の住民票の写しの職務等請求に対し、誤って同姓同名の別人の住民票を送付した

のが原因だとのことです。

そして、その顛末ですが、

(志木)市は「重大な過ちを犯し、申し訳ない」と平謝り。

原告側は訴えを取り下げた。

となったとのことです。

    

   

今年2月 全国弁護士協同組合連合会(全弁協)から

弁護士賠償責任保険事例集【簡易版】

という題名の本が送られてきました。

この本は、「はじめに」に、

弁護士賠償保健で取り扱われた事例を項目で分類し、弁護士の業務にかかるヒヤリハット事例を把握できるように編集しました 

と書いてあるとおり、

実際、弁護士賠償責任保険の保険請求がなされた実例を集め、一冊の本としたものです。

   

 

この実例集には、さきほどの読売新聞の記事に似た事例が掲載されています(同書86~87頁)。

5-(7) 同性同名の別人に対して訴状を送達してしまった事例

とのもので、

原告代理人の弁護士が、第1回口頭弁論期日に出頭した(被告ではない、)別人から慰謝料請求を受け、訴訟外で10万円を支払うとの内容で示談が成立し、同額が保険金として支払われた。

ちなみに、訴訟自体は、真実の被告に対し、あらたに訴状の送達が(裁判所から)なされた。 

と解説されています。

また、この事例における弁護士の対応に関しては、

住民票取寄せの申請を行った住所と役所から送付されてきた住民票の住所が、かなり似通っていることがミスの一因ではあるが、やはり住所が異なっている以上、両住所地の両者が同一人物か否かの確認をすべきであったと思われる。

とのコメントが付けられています。

別人への訴状の送達が、弁護士の別人に対する損害賠償義務を生じさせることを認め、保険金の支払いがなされたというものとなりますが、弁護士に対して厳しい判断がなされています。

事案の概要は、

弁護士から「 B市南町1-2-1  甲野太郎 」の請求がされたのに、被告とは別人である、「 B市南町1-2-3  甲野太郎 」の住民票を交付した。

弁護士は、「 B市南町1-2-3 甲野太郎 」を、被告だと鵜呑みにし、訴状が被告とは別人に送達されることになった

というもので、市の職員の大ポカが一番の原因です。

そんな案件で、弁護士に「責任あり」とされているわけです。

    

この弁護士賠償保険の事案は、

弁護士から、氏名と転居前の住所により「請求に係る者」を特定した職務等請求がなされたが、 市の職員が用紙に記載された住所を読み違えて、別の住所に住む、同性同名の別人の住民票を交付した。

弁護士は送付されてきた住民票が被告の住所だと間違えた。

ということになります。

読売新聞の記事の事案は、

同一市内での被告の転居があった案件についてのもので、

市の職員が、被告の転居前の住所を手掛かりにして、転居後の新しい住所を調べて、その転居後の住所が記された住民票を交付すべきところ、

ミスをして、別人の住民票を交付した。

弁護士は送付されてきた住民票が被告の住所だと間違えた。

というものです。

ですので、市の職員が、職務等請求用紙に書かれている甲野太郎の住所「B市南町1-2-1 」を、「B市南町1-2-3」と読み違えて、住民票を出してしまった事例集の事案とは、事案として全く同一であるとは言えません。 

     

    

とは言え、いずれの事案も、市役所から交付を受けた住民票には、

現時点の住所のほかに、転入前(ないし転居前)の住所が、書かれており、

また、生年月日も書かれている、

という点では一緒です。

    

      

読売の記事の事案でも、弁護士が志木市から新たに交付された住民票に よく目を通していれば、

市から交付を受けた住民票に書かれている被告の住所と、従前の住所とが連続していない

ことに気付いたのではないかと思われます。

弁護士賠償責任保険事例集が示す、

原告代理人である弁護士には、住所が異なる同姓同名の者が、被告と同一人物であるか否かについて確認義務がある、

との判断基準にしたがったとして、

読売新聞の大阪の事例では、

原告代理人弁護士に確認義務違反があったということにならないのでしょうか。

何となく、微妙な気がします。

    

また、大阪の事案では、原告は訴訟を取り下げてもいるようですが、なせなのでしょう。


巡回連絡 [感想]

オレオレ詐欺に気付いた69歳の女性が、騙されたふりをして男をおびき出し、その男を警察に逮捕してもらったということだそうです(4月12日のNHK NEWSWeb「だまされたふりで2度の逮捕に協力」 )。

この報道からは、オレオレ詐欺の被害にあった人が、「騙されてる(かも)」と分かっていれば、犯人逮捕までは至らなくとも、被害にあう人は激減するだろうなということが分かります。

       

昨年5月から7月までの間にオレオレ詐欺にあった被害者 200人について分析をした警視庁の分析結果によると、

オレオレ詐欺の被害者は、

●  8 割 以上 が女性 、

●  約 5 割 が70歳代 、

●  約 7 割 が夫婦2人又は一人暮らし 、

●  犯人がなりすました家族(息子等)は、被害者と離れて暮らしているも、その約9割は比較的近いところに居住している、

ということです。

また、犯人に なりすまされた息子については、

●  息子の年齢は30歳代、40歳代で、会社員が多い、

●  被害者の半数以上は、息子と 1ヶ月に最低1、2回、連絡を取り合っている、

●  約半数の被害者は、息子と振り込め詐欺など、詐欺の被害防止について話をしたことがある、

ということだそうです(警視庁「被害の実態(被害者アンケートの分析結果)」)。

 

ちょっと古いですが、消費者庁編の平成20年版国民生活白書 では、

振り込め詐欺対策として

・ ポスターやステッカーなどの広報啓発活動、

・ 通信履歴の保存について関係事業者の協力を得るなどによる捜査の効率化、「道具屋」や悪質なレンタル携帯電話事業者の取り締まりの徹底による犯行ツールの流通の遮断などにより、振り込め詐欺の検挙の徹底、

・ ATM周辺での顧客に対する注意喚起や声掛け、携帯電話を使用しながらATMを操作しない環境整備などのATM周辺における対策や匿名の口座と携帯電話の一掃、被害予防活動などの取組み

など を挙げています。

 

警察官が、潜在的な被害者である高齢者宅を、巡回連絡で訪問し、

「電話をしてきた者が、本当に息子であることを確認できないときは、とにかく 110番 しなさい」

などと触れ回った方が、よほど、振り込め詐欺の予防になりそうな気がします。

でも、平成20年版国民生活白書では、

ATM周辺における声掛けを一層推進する

とのいう対策は出てくるのですが、

巡回連絡

については何も触れられていません。  

 

一番、手っとり早そうな対策他と思いますが、どうしてなのでしょう。

 

(補足)

なお、巡回連絡の解説本としては、立花書房の「クローズアップ実務  ヴィジュアル巡回連絡」という本が最新のもので、よさげな感じですが、【警察官専用図書】だということで、一般人は購入できないようです。