でんさいネット、開始 [感想]
「でんさいネット」が今日18日から開始されました。
「でんさいネット」を運用するのは、全銀電子債権ネットワークという全銀協の下部組織です。
この全銀電子債権ネットワークは、
「電子記録債権は、単に、手形を電子化しただけのものではない」
などと、電子記録債権が、手形に優ったすばらしいものだと、喧伝しています(HPのパンフレット「でんさいの仕組みと実務」、ビデオ参照)。
でも、プレスへの滞欧か不十分だったのか、
産経新聞などは、「でんさいネット」のことを、
「手形を電子化した電子記録債権をインターネット上で取り扱うサービス」
などとか、
「電子手形」
とか、
説明をしちゃったりしています(2月18日の産経ニュースの記事「電子手形「でんさいネット」運用開始 印紙代や郵送費が不要に。」)。
「でんさいネット」を「手形や売掛債権に代わるペーパーレスの電子債権を一元的に管理するシステム」と説明どおりに記事にしてくれてている日経とは大違いです(先月25日の日経電子版の記事「電子債権取引システム、2月18日から 全銀協」)。
でも、「でんさいネット」は、手形の機能を代替するものであることは間違いないわけですし、電子記録債権法の立法の経緯にしても、産経のいう「電子手形」という表現は、間違いではなく、むしろ本質を突いた説明なのではないでしょうか。
では、この「でんさいネット」の将来的な利用は増えていくんでしょうか。
信金などでは、相当力を入れて説明会をやって顧客を募ろうとしているようです。
ですが、全銀協金融関連統計の見方の「全国手形交換高・不渡手形実数・取引停止処分数調」は、
手形交換高の最近の傾向について、
「手形交換高は、一般的に経済規模が拡大し、商取引が盛んになると増加する。
反対に経済活動が停滞すると伸び悩み、手形の額面金額が小さくなる傾向が見られる。
ただし、こうした景気動向以上に影響しているのが、ファームバンキングの普及等によ
り決済に手形・小切手を使用しないケースが増加していることである。この結果、枚数は昭和54 年中、金額は平成2年中をそれぞれピークに減少している。」
と説明をしています。
手形の利用が増える要素がないと言っているのと同じです。
こんな中、ファームバンキングで事足りている顧客をどうやって、「でんさいネット」に取り込み、利用してもうおうというのでしょう。
暗いように思うのですが。
日経新聞は、昨年11月に、
企業間の決済で手形や売掛債権に代わるペーパーレスの電子債権の利用が急拡大している。
利用企業は10月末に約5万社となり、債権残高は1兆円を超えた。ともに1年前の2倍強。
手形の発行や管理に伴う費用や手間を減らし、中小企業の資金繰りを楽にできる。
今年度内にも1300の金融機関をつなぐ新たなシステムも稼働し、「紙の手形ゼロ」の時代が視野に入ってきた。
と、電子記録債権の利用は、今後も拡大していくかのような観測記事を出しています(2012年11月27日の日経電子版の記事「電子債権の利用、5万社に倍増 残高1兆円を超す」)。
ですが、それは、どうなんでしょうね。
裁判官訴追委員会 [感想]
昨日、ブログを書いたあとに、裁判官訴追委員会 のホームページも存在していることを知りました。
ホームページは、裁判官訴追委員会の役割などを簡潔に解説をした分かりやすいものですが、
訴追審査事案統計表のページでは、
平成22年~24年の各年度の裁追請求の件数など、仲々お目にかかることができないデータが満載となっています。
例えば、裁判官訴追委員会が、裁判官罷免の訴追請求を受理した件数は、
平成22年 572件、
平成23年 639件、
平成24年 839件、
ということだそうです。
年を追うごとに件数が増加しているようです。
受理事案数の、昭和23年から平成24年までの63年間の総数が 16,934件ということですので、
ここ3年間の総数は 2,050件で、ここ3年だけで、全受理事案数の 1割超ということになっています。
弁護士に対する懲戒請求と同じように、近年、激増しているようです。
次に、裁判官が関わっていた事件の種別や、どんな事由が罷免の理由として請求されているかについて。
裁判官の罷免の訴追請求は、民事事件に関してが 64.1 %、と 約3分の2 程度ということ。
請求人が主張している罷免事由の上位3位は、
誤判不当裁判 48.9 %
訴訟手続違反 14.6 %
不当訴訟指揮 9.0 %
になるようです。
なお、最高裁判所以外が請求人となった罷免の訴追請求によって、 訴追の決定がなされた件数は 1件もないということのようです。
平成15、16年ころ、事件屋を相手とした訴訟を、20件ほどしました。
同一争点の訴訟を起こしてくるため、既に勝訴で終わっている判決を証拠として提出したところ、
事件屋は、( 敗訴判決をすれば、お前を罷免請求してやると裁判官にプレッシャーを掛けているるつもりなのかも知れませんが、)裁判官訴追委員会に提出した訴追請求状を書証として提出してきたりしました。
よくない筋の方々にとっては、裁判官の罷免の訴追請求という手段は、
平成15、16年当時から、既にそれなりのブームになっていたのかも知れません。
(図は、いずれも、裁判官訴追委員会のホームページの 訴追審査事案統計表 のページから引用したものです。)